「ヴェロンさん共々無事で何よりだ」 リーブラムはそれしか言わなかったから、オレもただ「ああ」とだけ返した。続ける言葉が見つからず、沈黙が場を支配する。ややあって、ふう、と一呼吸したリーブラムは「帰ろうか」と普段通りの声で言った。 「……どこへ」 「決まっているだろう、私の家だよ」 何を言っているんだ、とでも言いたげな顔。きっとオレも同じ顔をしている。こちらを見てリーブラムはふっと笑うと 「君一人匿えるぐらいの余裕がヘクシズに無いわけがないだろう? もちろん、手配したのは兄上だがね!」 ……最後の一言で台無しだ。オレも思わず笑って、一歩前へと踏み出した。
バタバタと走るに合わせ、未開封のボトルの中身がトプンと揺れた。ふたり揃って空き部屋へと雪崩れ込むと、後ろ手で鍵をかけたリーブラムは扉へともたれかかり、そのままズルズルと崩れ落ちる。 「私はもう二度と手を貸さないからな……」 「それ前も聞いたな。ほら、乾杯」 笑ってグラスを片方渡してやれば苦い顔ながらも受け取る辺り、素直なんだかそうじゃないんだか。 「うう……乾杯」 「あ、口つけたからには同罪な?」 「わかっているさ! 言われなくとも!」 「っバカ、声が大きい!」